CSRの取り組み
社長対談

第8回

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ビジネスの仕組みまでを含めて社会にどう貢献するか
吉田
大手が避けてきたがために空白化した治療領域がかなり残っています。それで、われわれ志を同じにする人たちが集まってこの会社を作り、新薬を開発して提供していこうということを考えているわけです。先ほどの風車の話と近いのですが、私たちの新薬の開発組織能力そのものが、社会的資本であるという側面を持っています。誰かが空白の治療領域のための新薬開発をしないと、患者数の少ない治療領域の新薬の開発が滞ってしまいます。
そこで私たちが、民間企業として大きなリスクを背負いながら、資本家から資金を調達してやってはいるのですが、国あるいはパブリックセクターで何かできるのではないか、やるべきではないのかということも常日頃考えています。こういう社会的資本の側面を持った事業に対して、もう少しファンド的なものがあってもいいのではないかと思います。
谷本
そう思います。
吉田
患者さんが、そこで待っているわけです。だれも取り組まないのであれば、私たちがしなければならないということで始めた事業です。現状を変える努力をしながら、日々難しい対応を迫られています。
谷本
これは医療行政を含めて考えなければならない問題です。目先のことだけを考えるのではなく、5年後、10年後にどんな国家を作るのか、持続可能な国であるには日本はどうあるべきかを考え、そこから戻ってきて、難病患者とか、社会的に排除された人たちをどうするのかという問題を、本来であれば考えなければいけないのです。
吉田
そういうことがなされていないので、われわれが立ち上がって始めたのですが、やってみると意外と難しい事業だと痛感します。
谷本
もちろん資金集めは大変です。しかし、シンバイオさんの強みは、一つはサイエンティック・アドバイザリー・ボード(SAB)に見られるような人のネットワークです。こういう専門分野の世界は、お金を出せばやってくれるという話ではまったくありません。開発者とか、目利きであるとか、研究者のネットワークは、お金に代えられない資産です。加えて、パイプラインと社員の質があります。
吉田
その通りです。SABの先生方のご協力、社員の強い使命感、臨床試験にご協力を頂く先生方の熱意等、これらの多くの無形の財産は事業展開のうえで極めて重要です。
谷本
そういうベースの上に、この企業をどう評価してもらうかということになると思います。それが、資金集めの後押しをするはずです。
吉田
私どもの社会的な側面について、これまで以上に理解を得る努力が必要だということですね。
谷本
企業の社会的責任(CSR)にも二つあります。
一つは、いい労働環境を作っていい人にきてもらい、その中でオープンに議論できる組織にする。そのことがコンプライアンス教育などと言わなくても、組織のみんなで議論できればいいはずです。あるいは、環境経営、環境マネジメントを経営の中にきちんと組み込むことが経営の力そのものを強めます。よく、うちは余裕がないのでCSRまで手が回らないなどと言いますが、それは誤解されています。CSRは社会貢献とは違います。社会貢献活動は、余裕があればすればいい話です。会社として、まずきちんとゴーイング・コンサーンとして、ステークホルダーに将来性を含めた対応ができることが大事で、そのためにはリスペクト(尊敬)され、レピュテーション(評価)の高い会社であることが大切です。
もう一つは、経営の基盤を強め、会社として持続可能性にどこで貢献しているのかということです。最近は「グリーン・イノベーション」ということがよく言われます。「グリーン」というのは環境だけのことではなく、「ソーシャル・イノベーション」を含めています。新素材や新技術だけでなく、ビジネスの仕組みまでを含めて、社会にどう貢献していけるのか。会社には、その会社だからこそできる強みがあるはずです。サステナリビティーを経営の中に組み込んで、新しい市場や、新しい顧客を生み出していくことも大事な側面です。実際にはかなりの部分は非常に短期でしか見ていないのですが、その部分を理解する市場が少しずつ作られています。
吉田
まだまだと思いますが、確かに変化は感じます。
谷本
資本主義市場は変わってきたと思います。かつては政府がしていたようなことを企業が事業とするようなってきました。それは民間会社でするようなことではないという声は、少なくなってきました。社会貢献の内容も広がりつつあります。かつては公的機関しかしなかったようなことを、社員や投資家がするようになってきました。そのような動きの最先端に、シンバイオ製薬は立っています。このモデルをぜひ成功させていただきたいと思います。
吉田
ありがとうございます。引き続き努力を重ねたいと思います。