CSRの取り組み
社長対談

第6回

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一企業の枠を超えた取り組みを
吉田
ドラッグラグについては、日本では特に血液がんの領域で新薬の開発が遅れています。欧米では使われているにもかかわらず、日本で使えないというギャップの大きい治療領域のひとつです。
私たちはその空白を埋めようと、8年ほど前にシンバイオ製薬を創業したわけです。しかしかなり長い期間先行投資が必要で、この間、膨大な開発費を市場から調達しながら会社を運営しています。結局、欧米の試験結果と同等の内容を日本人の患者さんで臨床試験をして結果を出すことが求められます。行政も欧米のデータの使用についてはある程度柔軟性を持っているのですが、そのまま欧米の試験結果を使えるところまで来ていません。日本人の患者さんで臨床試験を行い、第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験をして効果と安全性を確認し、場合によっては比較試験を求められることもありますので、これはまた大変な費用がかかることになります。
行政は比較試験をしないと、その薬が効いているかどうか分からないと言うわけですが、結局、それなりの規模の試験をしなければいけませんので、患者数の少ない治療領域は避けて通るということになり、空白化が起こりがちです。そのようなこともあって、ベンチャーの力の限界を感じながらも、私どもの企業理念である「共創共生」の志に基づき、一日も早く、一つでも多くの新薬を開発し、患者さんに提供していく強い意志を持って事業を推進しております。
星崎
新薬を承認しても副作用が出ることがあるので、行政は慎重にならざるをえないのだろうとは思うのですが。
吉田
そのへんは見極めが必要だと思います。欧米で使われているもので、日本人で同じような成績が得られれば、どんどん承認をしていく。一方、そのような前提条件がないものについては慎重に対応するという切り分けをしないと、ドラッグラグはなかなか解消しないと思います。
星崎
患者としては、自分で好き好んでこの病気になったわけではないので、できれば治したい。それが手続きのような問題で救われないというのは、本当に悲しく苛立ちを覚えます。
吉田
私たちが行政にお願いしていることは、私どもが取り組んでいる疾患については、希少がん、希少疾病でもあり、標準療法が確立されていないこともあり、欧米のデータをできる限り活用するという基本的な考え方に立ってほしいことがひとつ。それと、大手が手をつけない治療領域を埋めることを企業使命としてわれわれは会社を興し、「共創・共生」(共に創り、共に生きる)という考えのもと事業を遂行しているわけですから、患者さん第一の視点から行政の手を差し伸べていただきたいということです。
やはり一企業でできる範囲は非常に限られていますので、何がしかのサポートがほしいところです。
星崎
患者の立場からも、その点について配慮があってもいいと思います。
吉田
現実問題として、まだまだ十分に手のついていない空白の治療領域があり、多くの患者さんたちが苦しんでいます。われわれはそこに光を当てるため、全世界のバイオベンチャーの研究開発を常にモニターして、これは日本の患者さんのためになるという新薬の候補のデータが出てくれば、すぐさまその研究機関に出向き交渉をし、権利を得て日本で開発をするというモデルを組んでいます。つまり、研究所を構え、研究所から出てくるのを待つ、農耕民族的な考えではなく、常に獲物を探している新薬のハンターです。
当然、その権利を得るためのかなりの資金も必要ですし、導入したのちには、それに対してかなりの額の開発投資をしていくことになります。幸い、当社の開発第1号品となるトレアキシンという新薬は、再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫の領域において、発売後12ヵ月で5割を越す患者さんに使われ、標準薬としての評価がほぼ定まり、無くてはならない新薬の位置づけを確立することができました。このことが意味するものは、この分野の先生方、患者さんが優れた新薬の誕生を待ち望まれていたということだと思います。おそらく、私どもが導入し、昨年、開発を開始した新薬についても、同様のことが起こりえると思います。再発・難治性のMDSの患者さんにとっては、今現在は輸血しか選択肢がない訳で、一日も早く新薬の誕生を待ち望んでいらっしゃるのではないかと思います。
星崎
私たちがMDS連絡会を立ち上げたころには、まだ保険適用の薬がありませんでした。そういう中で、新たな注射剤が2011年に承認されました。この薬は移植のできないようなハイリスクのMDS患者さんには第一選択薬になりつつありますが、残念ながらそれでも半分くらいの人にしか効かず、白血球減少という副作用が起こることもあるため、より有効な新薬が待たれます。
吉田
私たちが取り組んでいる新薬は、二つの剤形があり、注射剤で再発・難治性の高リスクのMDSの患者さんを対象として開発を進めており、一方、経口剤は低リスクの患者さんを対象として開発を進める計画です。
星崎
それはありがたいことです。近くに病院があればいいのですが、血液内科の専門医のいる病院はどうしても限られます。地方に住んでいて、病院に行くだけで1日かかるという方も多くいます。そうでなくても大変な貧血症状があるわけですから、できれば自宅で服用して治療したい。副作用が少ない薬であれば、なおさら患者の期待は大きいと思います。