CSRの取り組み
社長対談

第4回

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ベンチャーの評価はパイプライン・バリューで決まる
松田
上場のときに、海外の機関投資家がだいぶ入っていたようですね。
吉田
はい。投資専門家のお話では、日本の企業でこれは珍しいことだということでした。
松田
きわめて注目すべきことだと思います。
吉田
欧米には、治療領域特化型の専門性の高い医薬品会社が30社から40社はあるのですが、日本では当社が初めての試みです。会社設立に当たって資金提供をしてくださったアメリカの経営トップの方にお会いしたとき、「日本にもようやくこういう会社が出てきたか」というのが最初の言葉でした。ある日本の企業の経営トップの方でも、30分間のアポイントメントをいただいてご説明始めると15分ほどで理解してくださる方がいらっしゃいました。目利きの方にはそういう見方がすぐにできるのですね。
松田
特にアメリカの場合は、イノベーションや起業家、ベンチャー企業というものに関して、全体として支えていくエコシステムが出来ています。
大学でナレッジと人脈を蓄え、MBAを取得して会社に入ってスキルを磨きながらお金を貯め、それでマネジャーになって経営能力を身につけ、30代後半にベンチャーを興すというのが一つのサクセスモデルです。その間のプロセス全部が自分で事業を起こすときのパートナー探しです。一つのベンチャーがうまくいったらキャッシュに換えて次の挑戦をし、余剰金が出れば若い起業家に投資をして行くというストーリーで、全体がエコシステムになっているのです。
吉田
アメリカは、イノベーションや起業を社会の原動力として高く位置づけていますが、日本ではベンチャー企業というと町の発明屋くらいの感じで、将来性を育み、積極的に支援するという方向にはもうひとつないよう思います。一人の社長、一人の会長がすぐれていても、エコとしての広がりがありません。
松田
最初から成功モデルをきっちり組むことができ、それに合わせてステージを上げていくという、基本姿勢がしっかりしたベンチャーが少なかったからです。しかし、ここ5年くらいでずいぶん出始めました。成功への確率をどう上げていくかということについて、最初から真剣に考えて見取り図を描くことのできる起業家が日本でも増えているのです。
吉田
私どもは、世界のバイオベンチャーが当社の研究所であり、常日頃、どこに何があって、どういう研究がされているかということを把握し、空白の治療領域に適合するものを見いだし、空白を埋めていくという事業をしています。これは、医療ニーズは高いけれども優れた薬がないという医療分野に対する社会貢献であり、ある意味ではコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー(CSR:企業の社会的責任)の固まりのような会社を創ろうとしているわけです。ところが、創業当時は製薬会社という社名なのに、研究所もない、薬がないではないかといわれて、日本の大手のベンチャーキャピタルには振り向いてもらえませんでした。どうも日本はモノがないと投資しないのです。
松田
目に見えない価値、インタンジブル・アセットにはなかなか投資しません。
新しい領域では、既存でないものを作るから価値が出て来るわけで、本当はその可能性にこそ投資しなければならないのです。それが投資というものです。
逆に、既存でないものは単なるデザインにすぎませんから、その成功の確かさはどうなのかということを、プレイヤーである起業家がきちんと示さなければなりません。起業家の中心である吉田さんの過去のキャリアはどうか、それを支えるサイエンティックアドバイザーも含めたチームとしてどのような競争優位性があるのかということを、投資の判断材料として見せなければなりません。
かつて大学の研究開発に予算がついたときに多くの大学発ベンチャーが出たことがあります。そのほとんどが絵に描いた餅を並べて終わったため、ベンチャーというと日本ではマイナスのイメージが定着しました。しかし、本当のベンチャーというのは保有しているパイプライン・バリューと、その実現可能性で評価されるべきものです。その点ですぐれた評価眼(目利き力)を持っている投資家が、大きなリターンを得るのです。