CSRの取り組み
社長対談

第4回

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専門性の高さが生む高度なアウトプット
松田
確かにこのような患者数の少ない治療領域には、巨大マーケットで儲けようとする大手製薬企業は入って来づらいでしょう。価格競争もなく、先の新薬は発売わずか1年でシェアが5割にも達しました。御社は、非常に強力なメガニッチ市場の新たな開拓に成功したといえます。しかし、昭和30年代に約70歳未満だった平均寿命が、いまは80歳を超えました。1000人だった患者さんが1万人とサイズが大きくなると、大手も放っておかず参入して来るのではないでしょうか。
吉田
時間とともにその可能性は否定できないのですが、このような治療領域は非常に特化された専門性の高い領域です。昨日まで降圧剤や糖尿病といった薬の研究開発をしていた企業が、今日からがんの治療薬を開発するというわけにはいきません。ナレッジインテンシブな事業ですから、明日からそのナレッジベースを変える、研究開発のインフラを変えることは、製造ラインを変更するのとは違って大変なことなのです。しかも、日本には企業内のがんに取り組む研究者が欧米ほど多くありません。挙句の果ては、大手企業は欧米のバイオベンチャーを買収したりするのですが、残念なことに日本においてのがん研究とか抗がん剤の開発は思ったようには進んでいない状態です。
松田
その点、シンバイオ製薬は世界最高水準の頭脳をそろえたサイエンティフィックアドバイザリーボード(SAB)をはじめ、優秀なエキスパートで組織を固めました。血液がんの領域ではオンリーワンともいえるこのスペシャリティーのレベルの高さが、高度なメガニッチのアウトプットを生むのですね。
吉田
がん領域においての知のクリティカルマスを創りだすことは、創業時点から私が最も留意した点です。そうすることにより、正しい判断ができるのです。
松田
このような企業は、世界的には多いのですか。
吉田
いま、多分、全世界に3500社ほどのバイオベンチャーがあります。
松田
その中で、製品を世に出して売り上げ、利益を出しているのはどれくらいあるのですか。
吉田
僅か2%の約70社しかありません。98%は何をしているかといいますと、事業は研究開発主体で赤字であり、IP (知的財産権)というインタンジブルのアセットをもって、新薬の開発を行うことにより事業資金を調達しています。つまり、将来的に製品が出てくるという実現可能性を元手に資金を調達し、研究開発をしているわけです。よくバイオインダストリーは産業としてどのような産業形態か、を考えますと、「研究開発産業」ということになると思います。