CSRの取り組み
社長対談

第1回

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吉田
手術のあと、化学療法を薦められたのですね。
岸本
はい。
でも、その段階で非常に迷いました。
手術に当たった主治医からは、再発予防として薬が出ると説明を受けていました。
一方、最初にがんの告知を受けたのは、入院設備のない別のクリニックの先生で、
その方自身も大腸がんの経験者でしたが、化学療法を選択しなかったということでした。
最初に診断をした医師と、執刀に当たった先生との方針が違うので、
かなり迷いがありました。
吉田
そこで、どのようにされましたか。
岸本
自分でずいぶん情報も調べましたし、
セカンド・オピニオンのようなことも2回試みました。
一つは、ネット上で専門の先生方がセカンド・オピニオンを
受け付けるというので質問しました。
もう一つは手術を受けたのとは別のがん専門病院に相談に行きました。
そこでかなり詳しい説明があり、再発予防については研究段階であること、
研究段階では効く可能性が何%かといった情報をいただきました。
吉田
それは岸本さんにとっては納得のいくものでしたか。
岸本
情報収集ができ、先生方の真摯な向き合い方も
満足のいくものだったので感謝しています。
ただ、奏効の確率を知ることができても自分は効く方に入るか、効かない方に入るか、
どちらに当てはまるのかがわからず、自分としてはどうすべきか、
答えが見つかりませんでした。
つまり、できる限りの情報収集をしても、答の得られない問いもあるとわかったのです。
吉田
それは抗がん剤の難しいところですね。薬効は統計的には説明ができても、
いざ目の前の患者さんにどのようにあてはまるか。
また、情報量も多いなかでどの情報を信じるか。
岸本
情報には、存在するのにそこまでたどり着いていない場合と、
もともと存在しない情報だという場合と、二つの場合があると思います。
もともとない場合は、どこかでそれに気づかないと、患者はどこまでも求めて、
たどり着けないという焦燥感に駆られることになります。
吉田
新薬としての治療法が確立されるまでは、情報はなかなか定まりませんし、
専門医の中でも意見を異にすることもあり、患者さんにはさらに難しいということです。
岸本
インターネット上のセカンド・オピニオンでは、消化器外科の専門の先生が、
私のような虫垂がんの場合には抗がん剤は効かないとされました。
もう一つのがん専門の病院の先生も、
大腸がん一般に対してもまだ結論は出ていないということでした。
そうすると、自分の気の済むようにしてもよいということなのでしょうかと聞くと、
それも一つの考え方ですと否定はなさらなかったので、再発予防に関しては、
まだ科学の領域でも決定的な方法はないのだなという印象を持ちました。
吉田
新薬の開発はこれで良いということはなく、
また、世界のどこかで新薬が研究され、開発されています。
ひとつのエビデンスが確立されるまでには時間がかかります。
岸本
大腸がんの再発後の治療に関しては、アバスチンが出たり、
TS1という胃がんの薬が効くとされたりと、
さまざまな薬が選択肢に入ってきたのはそのあとのことです。
吉田
そうでしたね。
岸本
2001年はアバスチンもまだ、保険は適用されていない状況だったと思います。
海外の情報に接している人が、海外ではアバスチンという薬を
使っているらしいと言っていました。
再発予防のための術後の補助的化学療法としては、
いまなおこれといった薬がないと聞いています。
吉田
新薬の開発は日進月歩で有効性は間違いなく高くなってはいます。
岸本
本当にこの10年間いろいろな薬が出ています。
2001年の私の体験はこうであったけれど、
それがいまの皆さんに必ずしも当てはまる助言ではない
ということも付け加えたいと思います。